SOBA×CAFE「EN」/河童

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SOBA×CAFE「EN」

SOBA×CAFE EN 026-274-5137
SOBA×CAFE EN · 〒388-8006 長野県長野市篠ノ井御幣川1155−1
★★★★☆ · 蕎麦店
SOBA×CAFE EN | 長野市篠ノ井で本格手打そばとお酒が楽しめるカフェです。
長野市篠ノ井で本格手打そばとお酒が楽しめるカフェです。木を使った明るい店内と心地よい音楽で、どなたでもくつろげる空間作りを心がけています。様々な人の集いの場でありたいという思いから、親交のあるアーティストの生ライブや、ワークショップを開催し...

SOBA×CAFE「EN」

〒388-8006 長野県長野市篠ノ井御幣川1155−1

秋の午後、カフェとして訪れました。そばシフォンケーキとコーヒーで、のんびり休憩です。こちらのお店は篠ノ井駅近くにあります。篠ノ井駅周辺はコンパクトながら、通りが複雑で色々な建物が密集しています。公共施設、工場、店舗、住宅、施設・・・。「EN」さんは抜け道のような信号の無い交差点の角にあります。

角皿の上には、蕎麦の実が添えられていて、カリッとした歯応えが香ばしい。柔らかいシフォンケーキのアクセントになっています。焙煎珈琲の苦味は仕事で急かされた心を落ち着かせてくれます。

ランチタイムから過ぎた時間なので、とても静かに過ごさせていただきました。ありがとうございます。次回は「お蕎麦」を。そしていつかは「お酒」をいただきたいです。

お店の本棚には数々の雑誌がありました。アウトドア系が多い。中でも登山の雑誌が大きく占めていました。オーナーさん、登山好きなのかな?お客さんに多いのかな?などと思いながら一冊手に取りページを捲りました。素敵な世界ですね。僕はまだまだ、知識も経験も装備も未熟。誰かに導いてもらいたいものです。僕が住む善光寺平では晴れていると北アルプスがよく見えます。いつか、いつか、と思いながら今に至る。ちょっともどかしい。

・・・山登りをする人達に「好きな理由」を聞くのはスマートではないし、ナンセンスだ。その人達それぞれに理由があって、目的があって頂を目指している。・・・年月があったのに本格的に実行しなかった僕は、多分、違う眼で山を眺めている。山の向こうにある異世界に憧れて過ごしてきたのだ。・・・どこで?・・・この病院のような世の中で。・・・あの世界に行ってみたい。あの世界で過ごしてみたい。そしてあの世界から戻ってくるのだ。・・・戻ってきたら鉄格子の嵌った窓から青空を見上げ、あの世界を振り返りたい。あの世界を懐かしみたい。・・・病んでいるのは自分じゃない。・・・この人間の世界の方だ・・・。

河童

芥川龍之介6 河童 (大活字本シリーズ 6) [ 芥川 龍之介 ]

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「河童」

芥川龍之介 1927

・・・

三年前の夏のことです。僕は人並みにリュック・サックを背負い、あの上高地の温泉宿から穂高山へ登ろうとしました。穂高山へ登るのには御承知のとおり梓川をさかのぼるほかはありません。僕は前に穂高山はもちろん、槍ヶ岳にも登っていましたから、朝霧の下りた梓川の谷を案内者もつれずに登ってゆきました。朝霧の下りた梓川の谷を──しかしその霧はいつまでたっても晴れる景色は見えません。のみならずかえって深くなるのです。

・・・

三十歳位のある精神病患者。その男は三年前、上高地から穂高山に登ろうとしていた。朝霧の濃い梓川の谷を登り、ようやく晴れてきた視線の先に「河童」がいた。男は河童を追いかけるが穴らしきものに落ち、深い闇の中へと吸い込まれてしまう。・・・そこは河童の国だった。銀座通りと変わらない街並み、自動車が走るといった人間文明と変わらない国であった・・・。

昭和二年(1927)三月、芥川龍之介は文芸雑誌「改造」にこの短編小説を発表しました。舞台は上高地(長野県松本市安曇)。大正池から遊歩道を歩いてゆくと「河童橋」が現れます。芥川竜之介は、梓川に架かるその橋から着想を得て、人間社会を皮肉に描いた『河童』を誕生させました。

『河童』を発表じたその年の七月二十四日の未明、芥川龍之介は致死量の睡眠薬を飲み、・・・しました。遺稿『或友へ送る手紙』には「何か僕の将来に対する唯ぼんやりとした不安である」と心中が書き残されていました。

思うこと

芥川龍之介は行動派でした。槍ヶ岳登山をはじめ駒ヶ岳、御岳、浅間山、赤城山、榛名山などに登山し、奥多摩から塩山へ、下諏訪から和田、大屋へと徒歩で越えています。

とてもとても真似はできませんが、僕もよく歩くようになりました。景色を見たり、音を聞いたり、風を感じたり。考え事がまとまることもあるし、何も生み出せないまま、歩いている時間帯もある。過去と未来を行ったり来たり。

芥川龍之介はどんな思索をして歩いていたのでしょうか。

ずっと「河童」の世界を探していたのでは、と思う。

そして、見つけて行ってしまった。

「ぼんやりとした不安」を抱えながら。

(僕は芥川龍之介の年齢をいつのまにか越えてしまっている。)

どこでもいいから遠くへ行きたい。

行くことができるのは天才だけだ。

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