お店:🥃【こむしこむさ】/書物:📘『太宰さん』(石井桃子)

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…そのころ、私は、夜ねむれないでこまっていた。ある友人がねる前にベルモットをのめとすすめてくれた。そのころは、もうなかなか外国製のお酒など手にはいらなくなってい

たのに、物知りのその友人は、鍋屋横丁の近くのある小さい店に、そんな物がヤミでなく売られていることを知っていた…(石井桃子)

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明日もまた、同じ日が来るのだろう。幸福は一生、来ないのだ。それは、わかっている。けれども、きっと来る、あすは来る、と信じて寝るのがいいのでしょう…「女生徒(太宰治)」

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🥃【こむしこむさ】

🥃【こむしこむさ】

長野県長野市南長野南石堂町1279-3

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雨上がり。

「こむしこむさ」さんの《時間》にお邪魔しました。

《VERMOUTH(ベルモット)》

主に食前酒して飲まれるほか、カクテルの材料や料理に使われるお酒。白ワインを主体とし、ニガヨモギなどの香草やスパイスを配合して作られるフレーバードワイン。

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秋も、やっぱり眠れない。秋は、ずるい悪魔なのです。夏のうちに全部、身支度をととのえて、せせら笑ってしゃがんでいる。そして僕の前にふっと現れる。…こういう時は「こむしこむさ」さん。石井桃子さんの随筆に引き寄せられるように…秋の風と「メランコリー」はおなじものだと思う。

🍑《ベルモット》

(太宰治は小説家になるために井伏鱒二に弟子入りしている)

ある日、井伏さんと太宰さんが、突然、私の家のベランダの外に立たれ…そのうち、井伏さんが、子どものように、「石井さん、ベルモット。」と言われた。…晩春か、初夏で、みどりの葉の色のいっぱいなベランダでベルモットをのんでいらしった井伏さんたちは、私には、とてもうれしい風景だった…。

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📘『太宰さん』

📘『太宰さん』

石井桃子

〈戦争ちゅうと戦後〉より

(岩波書店「石井桃子集 7」一九九九年三月刊)

「太宰さんにお会いしたことは、何回もない。多くて五、六回だったろうか。それも戦争ちゅうの短い期間だけだった…」

🍑《走れメロス》

ずっと前のこと、私は、メロスとセリヌンティウスの逸話を、あるイギリスの本で読んだ。そして、大分年上の知人に、…たいへん感激して語った。ところが、その人は、…「きみ、そんな話、ほんとにあるかね。」と言った。若かった私は、もうその人と話してもはじまらないと思って、何も言わないでその人をけいべつした。…それから、まもなく、ふと手にとった「新潮」か何かに、「走れメロス」という題の小説を見て、私はほんとにうれしく思い、その時、太宰治という作家の名を知った。…戦後、私は、東北で夢中になって百姓をしていた。…東京の井伏さんのところへ手紙のついでに、「太宰さんも東北ですね。」と書いたら、井伏さんから、「太宰君の住所は、どこそこです。」というかんたんな御返事があった。

🍑《太宰さん》

…何カ月かして井伏さんにお会いした時、まず「太宰さんがお亡くなりになって…」と言わずにいられなかった。そして、私は、話の途中で、「友情って、結局、そこまでは繋ぎとめられないものなんですね。」というようなことまで言ってしまった。まるで井伏さんを責めるように。…井伏さんは、ひょっと、「太宰君、あなたがすきでしたね。」と、おっしゃった。私は、いまでもよくおぼえているのだけれど、「はア」と笑うような、不キンシンな声をだしてしまった。そして、びっくりしたまま、「それを言ってくださればよかったのに。私なら、太宰さん殺しませんよ。」と言った。…「だから、住所知らしたじゃありませんか。」と、井伏さんはおっしゃった。

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井伏の表現では「あのころの太宰は、あなたに相当あこがれてゐましたね。実際、さうでした。」となっている。「桃子さんは、びつくりした風で、見る見る顔を赤らめて、『あら初耳だわ。』と独りごとのやうに言つた。『おや、御存じなかつたんですか。これは失礼。』『いいえ、ちつとも。──でも、あたしだつたら、太宰さんを死なせなかつたでせうよ。』この才媛は、まだ顔を赤らめてゐた」となっている。

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石井 桃子

1907〜2008

児童文学作家・翻訳家。

「のんちゃん雲に乗る」(1951)がベストセラーとなり映画化もされている。

「くまのプーさん」「ピーターラビットのおはなし」「うさこちゃん(ミッフィー)」といった数々の欧米の児童文学の翻訳も手がける。戦後児童文学界における業績を高く評価され、1954年、菊池寛賞を受賞。同年、フランス文学者の「内藤濯」に「おもしろいから」と勧めて訳させたのが「星の王子さま」(岩波書店)である。〈『Le Petit Prince』(直訳すると「小さな大公」)〉

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想うこと

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「五月病」と呼ばれる心の病気がある。自律神経の失調、倦怠感、食欲不振、不眠…。主な要因は新生活のストレス…まじめな人に表れがち。回復方法は、休息をとる、誰かに相談する…自身を客観的に捉えて気持ちを切り替えること。今はもう秋の風。この季節、心の病気は「五月病」とは様相が違う。この時期の心は危ない方向にいく。自分を認めてくれるもの(扇動者)への依存に向かわせる…カルトの土壌です。今はSNSの中にも扇動者がいる。僕らの、くじけた心は操られやすい。

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太宰治は1948年6月13日に玉川上水で山崎富栄と入水した。満38歳没。二人の遺体は6日後の6月19日、奇しくも太宰の39回目の誕生日に発見された。〈6月19日〉は彼が死の直前に書いた短編「桜桃」にちなみ、「桜桃忌」と名付けられている。

…「桃」か…

《VERMOUTH(ベルモット)》

グラスを眺めて想うこと。

…こむしこむさ…にて。

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