らしく・La_chic
らしく ダイニングキッチン 0267-31-6367らしく
La chic
軽井沢町追分655-1
ダイニングキッチン「らしく」さんにてランチ。
「鶏もも肉のトマト煮込み・オーブンチーズ焼き」
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自家製のトマトソースとボリュームある鶏もも肉をじっくり煮込み
仕上げにチーズをのせて焼きあげました。とのメニュー。
とても美味しい。
付け合わせの野菜が、軽井沢らしい。
コーヒーもお願いして、のんびり過ごさせていただきました。
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まだまだ寒い軽井沢です。この追分宿は人通りも少なく、なお一層、寒く感じます。でもそれが、独り歩きにはちょうどいい時もあるのです。心悲しいとき、そして、堀辰雄の世界に触れたいときには、この侘しさも、逆に心地よい。
美しい村
風立ちぬ・美しい村・麦藁帽子 (角川文庫) [ 堀 辰雄 ] 価格:523円 |
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『美しい村』
堀辰雄 1934
私はしばらく、今しがたまでその少女が向日葵のように立っていた窓ぎわの方へ、すこし空虚になった眼ざしをやっていたが、ふと気づくと、そこいらへんの感じが、それまでとは何んだかすっかり変ってしまっているのだ。私の知らぬ間に、そこいら一面には、夏らしい匂いが漂い出しているのだった。
高原の避暑地「K村」(軽井沢)を訪れた。或る女友達との別離を小説に書くつもりであるが、様々な苦しみに捕われたまま、村を歩き回る毎日に、小説の構想は浮かんでは消えてゆく。生まれては発展する。だが、しばらくすると興味を失う。思い出が呼び覚まされては、そっと消えてゆく。夏が近づいてきたある日のこと。窓から見える中庭の向こうに、突然、一輪の向日葵が咲きでもしたかのように眩しい少女が立っているのが見えた。黄色い麦藁帽子をかぶった、背の高い痩せぎすなその少女は、「私」の視線に気づき、好奇心いっぱいの眼差しで「私」の方を見つめた・・・・・。
毎朝決まった時間に絵具箱をぶら下げて出かけていく少女。次第に「私」と打ち解け、腕を組んで歩くまでに親しくなる、この向日葵のように眩しい少女の名前は「矢野綾子」。のちに「堀辰雄」の婚約者となり『風立ちぬ』のヒロインとなる女性である。
「風立ちぬ、いざ生きめやも」
美しい自然に囲まれた高原の風景の中での「私」と「お前(節子)」の物語の始まり。
「どっちへ向いて行くんだか、私にはちっとも分らないわ」彼女はいくらか上ずったような声で言った。「実は僕にも分らなくなっちゃったのさ……」
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色々と、思いを巡らせて。ふんわりと温まりながら、美味しい食事。普段は口にしないような高原野菜が盛り込まれていました。避暑地として最も知名度が高い軽井沢ですが、冷涼な気候風土で、(夏場でも「緑陰」に入れば涼しい。)浅間山の山麓で土地も痩せており、農作物の栽培は非常に厳しい地です。明治二十年代に避暑に来た外国人たちがもたらした、珍しい野菜「甘藍・玉菜(キャベツ)」の栽培から始まり、今に受け継がれる軽井沢の高原野菜。そのルーツを思い起こすことができました。
春が近いとはいえ、まだまだ冷える軽井沢です。店内には、ストーブに火が入っていました。侘しい気持ちから、ゆっくり回復していく。これも心地よい。
お会計のあと、奥様から
「長野市は、もう桜は開花しましたか?」
多分、今日です。もう準備はできています。「春」です。
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