暮らす店 実と花
暮らす店 実と花 / 珈琲 月薫 090-8974-2325暮らす店 実と花
長野市三輪8-37-4
お盆明けの青空に「サルスベリ」の濃いピンク色の花が映えます。
「暮らす店 実と花」さんへフラリと訪れました。
オーナー様・奥様の二人で営まれているお店です。
住宅街にある、平屋の古民家を少しだけ改装されたお店。
お庭も前住人の雰囲気がそのまま残っているようです。
・・・本当に何気無く。「サルスベリ」に呼ばれて。
「お客さまと紡ぐ 店主のおまかせブレンド」(ホット)
台湾スイーツ「3種トッピングのせ豆花」
(あずき・白きくらげ・ピーナッツ/和紅茶シロップ)
ハンドドリップコーヒーの香りを存分に受け入れるため、ワイングラスで提供していただきました。指元から顔へ近づける適度な距離感を生み出す。(ワイングラスの形状は香りのためのもの。)味も好みを伝えて酸味が出るフルーティーなブレンドにしていただきました。
一緒にお願いした「豆花」。豆乳の自然な甘味が感じられます。トッピングとシロップとの相性も良く、浮かべた氷で涼やか。シーリングファンの風の揺らぎも相まって、窓から見える夏空にかざしてみたくなります。
美味しいものと素敵な時間。とても自然な過ごし方。
このような空間で過ごすと、気分や体調が良くなっていく。ほんの少しでもやる気が湧いて、自身の出来る事や満足感が増えていくように思います。
ビジュアルだけで物事を捉えてばかりいるのではなく、人として持つ五感から受け入れていきたい。誰かに伝えるための(自分だけの)「言葉」作ることができるかもしれない。このような空間は、良い素材になる。「床の間」だって残っている・・・。
・・・ライト、ソファー、椅子、カウンター、食器・・・、「さん」づけで呼ぶようにすれば、「もの」が「いきもの」になる。
自分だけに見える世界があるかもしれない。庭の木々や花々だって・・・。
家守綺譚
価格:539円 |
梨木香歩 2004
・・・学士「綿貫征四郎」の著述せしもの。・・・
一軒家で生活を始めた。私の学生時代の親友「高堂」の実家である。高堂はボート部に所属していた。山一つ越えたところにある湖でボートを漕いでいる最中に行方不明になった。高堂の父親から隠居するので家の守をしてくれないか、と持ちかけられたのだ。ある風雨の日、ガラス戸がガタガタカタカタと激しい音がする。庭の「サルスベリ」が顔を押し付けるように体当たりをしているのだった。・・・イレテオクレヨウ・・・
やがて風雨がおさまった。すると今度はキイキイと音がする。床の間にある家主が置いて行った掛け軸から聞こえて来る。水辺の葦の風景で白サギが水の中の魚にねらいをつけている図だ。その風景の奥からボートが一艘近づいてくる。漕ぎ手は「高堂」であった・・・。
この小説の二十八ある見出しは全て「植物」となっています。
サルスベリ・都忘れ・ヒツジグサ・ダァリア・・・・・。
(そして七番目に「竹の花」があります。)
(どれも「いきもの」として、人に近い意思だけでなく、姿をも持っている。)
ー よく辿り着いたものだな。
ー ええ、なんだか大変でした。狸やら竹の花やら。
ー 僕の友だちも湖で行方不明になりましたが、気の向いたときに還ってくる。
と、云った。ダァリアはちょっと、泣きそうな風に顔をしかめたが、
ー ええ、そう、そういう土地柄なのですね。
と呟き、明々と提燈の燈る通夜の席に戻っていった。
次々と。だが日常的に起きる不思議。
「もの」も「家」も「土地」も、全てが不思議を持っており、かつ、いつの時代かもわからない「記憶」を持っている。歴史を調べれば、不思議を受け入れることができるものなのか・・・。それも「不思議」と分からない。ページを捲る度に異空間へ入り込む。
想うこと
『暮らす店 実と花』は長野市の「三輪」にあります。村名「三輪」の由来は古代の善光寺平の開拓・開発にあたったのが「三輪氏」であるからと伝えられています。三輪氏は奈良県の大神神社を祖神として祭る日本古代の名族であり、国内各地にその痕跡を残しています。この近くの相ノ木東にある「美和神社」はそのうちのひとつです。「延喜式」にも記載されおり、由緒ある美和神社が鎮座している村であるとの理由で、この地は「三輪村」と命名されたのです。
「コーヒー」と「豆花」。美味しかったです。本日はありがとうございました。良いひとときでした。ふと手に取った雑誌に、こちらのお店の記事を見つけた不思議。記事の写真がテーブルの上と同じで異空間に迷い込んだようでした。それでも風は同じで、心地良い。
オーナー夫妻様。今日も明日も美味しいもの、空間、そして「暮らす店 実と花」。
大事に「家」を守ってくださいませ。
綿貫征四郎
「私は、与えられる理想より、刻苦して自力で掴む理想を求めているのだ。」
「まだここに来るわけにはいかない事情が、他にもあるのです。家を、守らねばならない。友人の家なのです。」
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